2007年3月11日日曜日

イレッサの取り消しは困る

「イレッサ承認取り消し」を求めているという新聞記事を見ただいぶ後にイレッサ薬害被害者の会のホームページを詳細に見てみた。

その声明文を読むと、その中で今投与中の患者については除外して、禁止するように求めていることを知った。

声明文では【既にイレッサの投与を受け医師により効果が確認された患者、臨床試験に参加する患者を除き、新規患者への投与を原則として禁止すること】とある。

ところが、どの新聞も記事中に「イレッサ投与中の患者を除く」という点は触れていなかった。

従って、私は声明文の詳細を知らずに「承認が取り消されたら、現状のイレッサ服用中の患者はどうすればよいのか?」という思いがあった。私の早とちりは大いに反省しなければならない。

「イレッサ薬害被害者の会」訴訟の論点は次の2点のようだ。

(製薬会社に対して)「夢の新薬」と過度に宣伝して、重篤な副作用を隠した。
(行政に対して)副作用があるのを知りながら、検討不十分で認可を早めた。

676名もの副作用による死者を出した事実は取り返しがつかない。こんなことは2度と起こしてもらいたくない。

しかし、一概に副作用死といっても、一つ一つのケースがそれぞれ事情や背景が違うのでややこしい。
多くの患者や医師が新薬に過度な期待をした、がん専門科以外の医師が安易に使用した、副作用について十分なチェックをしなかった、末期の患者や家族が強く望んだ・・・等々いろいろなケースがあったし、今から考えると異様な雰囲気の中で先を競うように使われたと聞く。

その背景には、現在の日本では患者が選べる抗がん剤が欧米の10分の1と極端に少ないという背景を見逃してはいけない思う。

短期間に多数の患者が亡くなるという不幸な事故だっただけに、事故の後は種々の対策が採られた。
使用する患者の範囲も制限されたし、副作用の監視のため入院が義務付けられるようになった。

どの抗がん剤にも死亡に至る副作用が必ず何%かはあるようだが、イレッサも直近だけ見るとそれと変わらない率になっていると聞く。

イレッサも当初から効果を出している患者はたくさんいる。私は副作用の事件の後だが、その中に入る。 私の場合は医師から他の抗がん剤の効果は10%以下だといわれている。だから、イレッサによって命拾いしたと思っている。

最初から冷静に今のような対策が採られれば、多くの患者が副作用で命を落とさずに済んだと思うと残念でならない。

私には副作用による死亡に対する「被害者の会」の損害賠償請求承認取消し請求 がどうしても結びつかない。

行政も、製薬会社も、それぞれの立場で謙虚に反省点を今後に生かしてもらいたいことはいうまでもない。 承認から販売に至る過程で落ち度があったのなら当然賠償の責任があると思う。

だが、少数といえども効果がある患者がいるのなら、副作用を最小限にする使い方をすればよいのであって、患者の選択肢を消すことはない。

副作用を恐れる余りに新薬の認定のスピードを遅くしたり、後ろ向きになるのはもっと困る。若者だってこれからはいつがん患者になるか分からないのだ。その時、欧米並みに抗がん剤の種類があることを望むはずだ。

副作用のない抗がん剤ができれば理想だが、そんなものは存在しない。副作用の説明と予防処置は十分にしてもらいたいが、危険を覚悟の上で患者は挑戦するのだ。

患者にしてみれば「がんに負けるか」「副作用にやられるか」を選ばなければならない場面はしょっちゅうだ。サインをするときにその覚悟をした上で無事と成果を祈りながら治療に臨む。 例え危険であろうとも、試す選択肢はある方がよい。

これはがん患者になってみなければ分からない。

2 件のコメント:

hana さんのコメント...

初めまして。
私も身内や友人に癌患者がいるので、遊びに来させてもらいました。
「現在服用中の患者は除いて」承認取り消しを求める という点は、安心しました。
マスコミの報道の仕方では誤解が生じますよね。
患者やその家族の立場に立った報道をしてもらえたら‥と思います。

tamy さんのコメント...

hanaさん、書き込みありがとうございました。新聞報道はセンセーショナルな点だけに重点をおいていて、患者のことには目を向けていないように感じてしまいます。公平な報道を望みます。