2007年9月8日土曜日

天国と地獄

最近、1週間ぐらい前からテレビドラマで黒澤明監督の「天国と地獄」「生きる」のリメイク版を放送するという予告がよくされる。今日と明日放送されるようなので今から楽しみだ。
私の年代は映画ファンが多い。私も例外ではなく、若い頃は平均以上の映画ファンだった。特に黒澤明監督の映画といえば他の監督とは一線を画した評価だった。「天国と地獄」(1963)は私が大学生の頃封切された。「用心棒」(1961)「椿三十郎」(1962)続いて公開された。黒澤監督は映画を時間と金を
かけて丁寧に作るので、年に1本のペースでしか発表されなかった。それだけに映画撮影中から新聞雑誌で大変な話題になり、封切りのときは大変な騒ぎになった。私もワクワクしながらバイトを休んで映画館の列に並んだのを覚えている。

「天国と地獄」といえば他の黒澤作品といろいろ違う性格があったのでよく覚えている。まずは時代劇の傑作を取り続けた監督が久しぶりに作った現代劇で話題になった。当時でも他の映画は殆どカラー(総天然色といった)になっていたのに、黒澤監督はモノクロにこだわった。そのなかでもこの映画は一部だけ彩色した部分がある。身代金を入れたかばんに薬剤を縫いつけておき、燃やすと煙に色が付くという設定で、この部分だけをモノクロ画面にマスキング合成でピンクに着色して話題になった。トランペットの音楽とともに、焼却炉の煙が突然モノクロからピンクになる画面が未だに目に焼きついている。スピルバーグ監督が「シンドラーのリスト」でその手法を借用して話題になった。

映画にも登場するが、当時幼児誘拐の罪が軽かった。未成年者略取誘拐罪で3ヶ月以上5年以下の懲役、営利略取誘拐罪で1年以上10年以下の懲役。監督はこのことを訴えることも映画製作の目的にしたが、一方で不幸なことに映画公開の後に都内を中心に誘拐事件が多発した。有名な吉展ちゃん誘拐殺人事件も犯人は逮捕後、『天国と地獄』の予告編を見て思い立ったと供述している。その他にも数件、この映画を模したと思われる事件が起こっている。国会でも問題として取り上げられ、刑法が現在の罪に一部改正されるきっかけになったという。

三船敏郎、仲代達也、香川京子、三橋達也、加藤武等々の芸達者な主役陣に新人山崎努が犯人役として抜擢されて話題になった。

6 件のコメント:

匿名 さんのコメント...

昔、確かに有名な事件でしたね。
今は、治安がすごく悪くなりましたね。

事件も公にされる事件と完全に隠蔽される事件がありますね。おかしな世の中になりました。

職場で、誰を信じてよいのか分からない、と嘆く若い子が昨年辞めていきました。

ところで、AppleのIPODは、買おうかなぁと思って居ましたが、市場の動きが変だなと感じていたら、やはり、新型が、でました!
PCも間もなく、OSがfreeな機種が出そうですよ。チップがIntelになったからですね。もし、冬の、ボーナスが出たら、変えるんですけど...。

匿名 さんのコメント...

黒澤ファンの僕が最初に観たのは学生時代で
もちろん公開から十数年後、池袋文芸座か銀座並木座でした。
今日のリメーク版も楽しみにしていたので観ましたが・・
研修医の動機がよくわかりませんでした。
明日の「生きる」はどうなるんでしょうね。

匿名 さんのコメント...

黒沢監督が何十年も前に、「天国と地獄」という映画を作っている事に驚きですね。現実の社会はもっと厳しい闇の社会が存在しているのでしょう。今、映画と言うマスコミが果たす役割は大きいですね。「生きる」も今見ても全たく古い映画に見えませんね。膵臓癌の患者は今も同じ苦しみを感じていますね。患者として複雑な気持ちですね。いかに難しい病であるかと言うことでしょうね。

匿名 さんのコメント...

ラザロさん
今の職場は年々、せち辛くなっているようで・・・。この前「人事も経理も中国へ」という文章を書きましたが、昔の職場にはどこも余裕がありました。病気の人がいても、急用で休む人がいても何人かは許容する余裕がありました。でも、これからは職場自体がサバイバル、子や孫は大変な時代に向かっています。

きんやさん
「天国と地獄」私も見ました。黒澤作品を95%なぞったドラマ作りでしたね。このドラマの根底は「貧富の差」なんですが、そのまま現代に当てはめても無理がある・・・と感じました。犯人のインターン生の住む住まいが「夏は暑く、冬は寒くて眠れない」なんて現実にはあり得ないから、見ている側もピントきません。まあ、なんだかんだ言ってもそれだけ日本は恵まれているともいえますが。

大さん
黒澤作品は娯楽目的でもその密度が違います。一本の作品に1年もかけ、演技は納得のいくまで何回でも繰り返し、周囲の調度品まで本物を探す・・・作る側だけでなく、見る側も長期間その期待を醸成する、そういう特殊な背景がありましたね。40年後の今見ても古臭く感じません。

匿名 さんのコメント...

こんにちは。
黒澤監督作品では、「羅生門」、「七人の侍」がいいですね。もっともテレビでの放送でしか見た事はありませんが。
山崎努さんが新人というのも見てみたい
ものです。

匿名 さんのコメント...

れいさん
山崎努は若いインターンの犯人役で、新人ながら、風格を備えていましたよ。
黒澤作品はレンタルビデオ屋さんには大体置いていると思います。私は近所のtsutayaで見たいときに時々借ります。